帰国隊員活動報告

活動報告(2005年12月〜2007年11月末)

H17-2 メキシコ 保健師 篠田早苗

配属先
メックスファムイスタルテペック診療所(NGOメキシコ家族計画協会)
メキシコの首都から夜行バスで約11時間のところにあります。
オアハカ州イスタルテペック市(人口1万人)という電気,水道のある街に派遣されました。インターネットカフェもいくつかあります。車に混じって馬車や牛車が通ったりという街です。

職種に関して
保健師という職種は日本でもあまりイメージの無い方が多いかもしれません。
職場の種類にもよりますが,日本では子育てや高齢者,世代の人々ごとの健康相談,家庭訪問や病気になる前の予防教育,健康指導等を行っています。
大きな会社の健康管理部門等にも配置されています。最近はメタボリックシンドロームなどで生活習慣病予防検診などでも関わっています。

今回私の赴任したメキシコには妊産婦への生活指導や,住民への生活習慣病予防指導,配属先でスタッフと協力して業務に当たる等が主な要請でした。

活動の内容
実際,赴任してみてビックリ。思っていたよりずっときれいで大きな診療所でした。ただしスタッフは丁度産休等で看護師が足りず,最初は言葉(メキシコはスペイン語です)も十分に出来ない中,診療所での仕事を覚える事から始めました。看護師の仕事は日本とは少し違っていて(例えば医師が点滴の補助をする、看護師は生活の世話はせず家族が行うなど)戸惑ったりすることもありました。平日は診療所内で手伝って,週末や夕方はクリニックの主催するイベントの見学にいったりしました。最初はイベント内容が難しくてサッパリわからず眠くなったりする事もしばしば。後半は何とか想像力で補っていたという所です。1年過ぎてからは小学校や保健所での栄養指導や,地域での生活習慣病予防の話などをスタッフと一緒にさせてもらう事ができました。
若者への性教育やイベントにも参加させてもらっていました。

現地での生活
最初は診療所スタッフの家にホームステイし、途中から一人暮らしをしていました。気候や街の雰囲気は沖縄のコンクリートの家に近い気がします。空は青くて深いです。私のいた街は年中半袖で平気な地域。1,2月は「寒い」といっても夜に毛布一枚かければ足りるくらいのものでした。4,5月はとても暑くて夜が寝苦しかったのが印象的です。おかげで太りませんでした。昼間熱せられたコンクリートが夜になっても冷える事無く部屋の中は蒸し風呂状態です。扇風機を回していても汗をかいて起きる,という事も何度かありました。

現地でのエピソード
メキシコはのんびり・・・
他の国でもよくあるのではと思いますが,時間に関してはあまりこだわっていなかったです。待ち合わせの時間に「今から行く」といって3日後に会った,とか,お祭り(フィエスタ)が2,3時間遅れな事はもちろん(時間通りに行くとまだ準備をしていたり、人が集まっていなかったりします)、診療所関連のイベントでも予定時間になっても準備ができていない,メンバーが集まってない,等がありました。小学校にも予防教育に行かせてもらいましたが日本のように時間割が無く,大きな休憩時間以外は区切らず授業をやっているのです。そういう習慣も関係あるのかな〜と思います。

新築なのに・・・
診療所で出産のための新しい部屋を新築した時。完成したときは乾期で雨の少ない時期でした。その後,雨期に入り大雨が降った時,壁や天井から水漏れが。それも少量ではなく大量に。掃除道具で水をかき出すけれどおいつかず、、
とやっている間に天井の電灯が水圧で落ちてしまいました。
スタッフは「あ〜 落ちちゃったよ〜!」と笑っています。所長も「今日はよく降るね〜 雨樋が詰まってるからだね〜 下もほら,カエルが泳げる池みたいになってるよ〜」と冗談まじりでしゃべっています。
事務の人は「本部に報告しなくちゃ!」と写真を撮っていましたが,「きれいにとってよ〜」「こんな感じ?」とポーズをとったりと、怒りだす人が誰もいなかったのがメキシコ人の良い所。その後2週間くらいして無事修理が終ったのでした。
食べ物事情・・・
メキシコは食事の種類が豊富でなかなか美味しい国だと私は思っています。
私の住んでいた所は先住民の人が多くて,食事も独特です。代表的なのは「トラジューダ」「ガルナッチャ」という食べ物でトウモロコシベースのクレープのように皮をぱりぱりに焼いて、中に肉やチーズ,野菜等をトッピングしたものがあります。ウチワサボテンを切って卵と炒めたりもします。ゲテモノの類いとしては「イグアナ」「亀の卵」「アルマジロ」でしょうか。一応世界的には動物保護のため禁止ですが伝統食と言うこともあり市場で売っていたりお祭り等で特別料理として出たりします。イグアナや亀の卵は養殖もしているらしいです。どれもチャレンジしてみた私ですが,けっこう美味しかったです。
ただしイグアナは見た目に「それ」とわかるので現地の人でも嫌いな人はいるようです。

現地に赴任して最初の頃,スタッフと一緒に車で出かけていたときの事。道を何か横切りました。彼女は「イグアナだわ!捕って食べるのよ!」と車をブーンとバックさせて探しましたがイグアナは去った後でした。私は冗談だと思っていたのですが彼女はかなり本気だったのだとあとで知りました。
お祭り好き・・・
メキシコの人はイベントが好きです。冠婚葬祭はもちろん,誕生日,記念日で自宅の庭や道路にテントを張ってお祭りをして皆にふるまったりします。そのためにお金を貯めている、女性はそのイベントごとにドレスを作る、という話も聞きました。バレンタインデーや独立記念日も同じく。診療所でも同じです。バレンタインデーはハート形の風船を買って来て診察室の扉に張り,ハート型の飴を患者さんにくばったりしました(血液検査の人は終った後で)。

時間があったら・・・
診療所は入院設備もありますが,いつも満床とは限りません。クリスマスやお祭りの時期等は皆さん他でお金を使うので外来も入院も少なくなります。
そんなときはスタッフでちょっとおしゃべりしたり,必要な物品の補充をしたりします。

ある日あんまり暇だったので,「今日は死後の処置の練習しよう!」と誰かが言い出し,看護師長自ら「私が死体役をやるわ」と立候補。
他の看護師が彼女をシーツでぐるぐる巻きに。彼女は大人しく寝てました。

私がいるときに亡くなったのを見た事はありませんが,どうやら患者さんが亡くなるとシーツで全身をミイラのように巻いて引き取ってもらうのだそうです。シーツは消耗品ではないのでケースが多いと困るのではないかな〜と関係ない事を思ったひと時でした。

性の多様性・・・
私の住んでいた街は診療所とは別のまちでしたが,メキシコ国内でも「女性が強い」「同性愛者や性同一性障害の人が住みやすい?街」として有名だったようです。若者への性教育の一環でも「同性愛者を差別しない」などの項目があったりしました。年に一回彼らがメインのお祭りもあります。その日はいろんな人が目一杯ドレスアップして来ます。その中には診療所のお掃除のお兄さんもいたりして、最初は気付きませんでした。そういえば彼は「僕、明日はばっちり決めていくから!」とか言ってたような、、、。好みは人それぞれ。性別はともかく愛する事ができる人,愛するパートナーと過ごせると言うのは素敵な事だと思います。

2年間を通して
全体にあっという間の2年間でした。出発する前に聞いていた「メキシコは治安が悪い」と言うイメージとはほど遠い,暑くて陽気な人たちと過ごせた貴重な体験でした。そして気候や文化,色んなものがバラエティ豊かなメキシコが身近で大好きな国になりました。

これからも何らかの形でメキシコやラテンアメリカと関わっていけたらいいなと思います。